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こどもの体温計

[2021.01.22]

体温ってそもそも何?という定義の話になると小難しいんですが、我々のカラダって、中枢温と末梢温(皮膚温)には差があるのはなんとなく皆さん想像できると思います。手足だけ冷たい、なんてことはよく経験するからです。ざっくり言うと、心臓から全身に送る血液の温度(動脈温)が、カラダの状況を的確に反映しております。外的要素(寒さ・暑さ・汗など)に左右されやすい皮膚温は、特に外的要素に影響されやすい小さな体のこどもたちにとってはばらつきが大きいため、あまり体調とパラレルに動いてくれません。

で、昔から体温といえば「腋窩音」が使われてきました。腋窩動脈という太い血管に皮膚が近いこと、挟むと閉鎖空間になるので測定誤差が生じにくいことなどから、それが一般的でした。しかし、最近はやたらと「非接触性赤外線温度計」がもてはやされています。カメラにおでこを映すやつ。銃みたいにピッと打つやつです。測定が秒で終わるので便利なんですが、体表面温なのでこどもにとっては不正確極まりない検温になります。またこれも秒で測れる「耳式体温計」もよーく赤ちゃん用として販売されていますが、これも赤外線で鼓膜温を測定するタイプで、耳の穴た真っすぐではない子供たち、耳垢がきれいに除去されていない子供たちには全く使えないものです(高いので、いいものかな?と勘違いしがちですが)

 僕が小児科医になって30年弱になりますが、やはり腋窩の体温計が一番正確に検温できます。腋窩計には「実測値(測定に5-10分かかるやつ)」と「予測値(計測が10から20秒程度)」があります。理想的には実測値がいいんですが、じっとしていない子供たちですし、最近の予測値はかなり正確なので、僕は予測式の方をお勧めしています。大体2000円前後です。一時期は薬局でも買い占めによる品切れが多かったですが、今は比較的安定供給されている印象があります。

 僕が言いたかったのは、赤外線のやつと耳のやつは買うべからず!ということと、それらで検温されてもあまり信用できないということです。ご参考になれば幸いです。

で、実は一番信頼ができるのは、お母さんたちの「手の感覚」です。これを超えるものはなかなかありません。いつも触れている方が、「なんかあったかいかな?」という直感がもっとも鋭いと思います。

どうしても保育園や学校などへも体温で振り回されることが多いご時世ですが、たとえ37.6度でお呼び出しになったとしても、「いつもと元気は変わらない」とは「食欲も通常通り」と感じる感性の方が、こどもの病状を的確に反映させてあげると僕は思っています。機械なんかより。自分の感性と子供たちの状態(元気のある・なしも)で、最終的な熱の有無については、ママたちの違和感がもっとも信頼できる検温なのかもしれません。

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