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理想はナラティブ

[2018.09.10]

医学を仕事としている我々は、勝手な経験則や独自の理論ではなく、EBM(evidence based medicine:根拠に基づく医療)やガイドラインの遵守を必要とします。

医学というサイエンスのなかで、正しいものを患者さんに説明し、同意をしていただき、治療に結びつける。そういう日々を過ごすと「正しい」という法律に頭でっかちになってしまいます。

正しいとされていることが、絶対正義だと。ついついそれをふりかざして説明してしまいがち。

しかし僕らの常識も、患者さん側の立場にたつと、そんなんどうでもいいから治したいって考える人もいると思います。

そこを臨機応変に立ち回るべきなのが、かかりつけ医に求められます。

たとえば、箸の持ち方が変でも普通にご飯を食べることはできるし、鉛筆の持ち方が変でもちゃんと読める字を書くことができたりします。

医療というものは、健康でいるための「道具」であり、それをどう使いこなすかは患者さん各々に任せてもよいところでもあります。

感染症などは、同じ病原体であってもおのおのの症状は違っており、めっちゃ高熱でもひたすら元気な子もいれば、微熱もないのに超具合悪い子もいる。

ひとそれぞれに疾患に対するストーリーがありますから、医学中心ではなく患者さんの言葉を中心に治療を組み立ててゆくことも大事です(narrative based medicine)

どうしても、科学的に正しいと証明されていることは押しつけがましい説明になりがちですし、「集団生活への復帰」はどのタイミングが正しいのか、学校感染症の文章通りにはいかないこともしばしば。

頭ごなしに説明するのではなく、どんなときでも患者さんからよくお話しを聞き、説明をしたうえで、「一緒に考えて結論をだす」のが理想かなあと思います。

 診察に時間的な余裕がないと「一緒に」が難しいんですが、まずは僕たちが聞く耳をもつことが、最終的には患者さんに聞く耳を持ってもらうことにもなると思います。。

まずは、思っていることを声に出してお話ししてみてください。どんなことでも、大丈夫ですから。ただし、僕も年寄りで若干耳が遠くなってきたので、少しだけ大きめの声でお願いします(笑)

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