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1歳・2歳児さんの全滅で思うこと

[2021.05.24]

4月中旬から始まった高岡市内での保育園・幼稚園でのRSV流行がまだ猛威を振るったままです。4月から現在まで全く風邪をひいていない1歳児・2歳児さんは、おそらく「いない」といっていいと思います。それぐらいひどい状況です。RSVが入ってしまった保育園ではほぼ1歳・2歳児さんは全滅しています。容易にうつされ、容易にうつす。それが感染症の厄介なところです。コロナ禍になり、昨年は本当に感染症が流行りませんでした。不要不急の外出を控え、感染対策を徹底していたみなさんの頑張り、いかに人の動きが制限されると感染症とて広がるすべがないのかを改めて小児科医としても感じました。2020年度の当院のインフルエンザ診断は「ゼロ」、RSV診断も「ゼロ」でした。子供たちにとっては「良い事」であったと思います。

 よくこんな話をします。生まれたばかりの赤ちゃんは、胎内でママからいろいろなウイルスや菌に対する抗体「移行免疫」をもらって生まれます。その力は生後6か月ごろまで維持します。なので赤ちゃんは滅多に風邪をひきません。ただしママが風邪をひくと赤ちゃんも風邪を引きますし、RSVのように抗体だけでは防げない感染症があるなど、一部例外はあります。そして移行抗体がなくなる6か月以後になると、赤ちゃんはまっさらな自分の免疫を駆使してカラダを強くしてゆきます。風邪をたくさん経験し、最終的には強くなる。なので全く感染症のない世界にいると、免疫力が鍛えられません。一生のうちのかなりの割合の風邪は、3,4歳ぐらいまでに経験することになります。しょっちゅう風邪をひき、保育園を休み病院を受診する1,2歳の時期を経験し、いつしか年中・年長ぐらいになると年に1,2回しか風邪もひかなくなる。立派な成長が見られます。そして小学生になるとほとんど風邪を引くことがなくなります。こういう一連の免疫的成長が、子供たちにとっては望ましいことなのです。

 「全く風邪をひかない」よりは、「適度に風邪を引きながら強くなる」ほうが子供たちの成長には望ましいことなのです。今回のRSVもその中の一つです。風邪を引かないように神経質になり過剰すぎる注意を払うよりも、適切な年齢で適切な感染症にかかっておき、将来強くなるのを待つ方が実は望ましいのです。まあでも、「ほどよく」っていう塩梅が難しいのですが。風邪をひいちゃダメ、良くないのではないこともパパ・ママに覚えていて欲しいのです。引くのは避けては通れないこと、その時に適切な対応が取れればよいのです。風邪は、こどもが成長するため大切な人生のレッスンであることを覚えておいてください。ゼロでは成長はできないのですから。

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