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ぐったりする熱と、ぐったりしない熱

[2023.11.25]

「ないない」と嘆いていたアデノの検査キットは、本当に手に入らなくなりました。そしてインフルエンザ(以下Flu)の検査キットも「岸田内閣の支持率」ぐらいにヤバい感じになっています。無い袖は振れない、と言い訳ばかりですみませんが、今の医療業界の流通は、あってはならない事態が起きています。やりくりしながらの診療で僕も疲れます。で、愚痴ばかり言ってもしょうが無いので、老害の昔話を少々。

30年前は、風邪の診断に検査キットなどは全くありませんでした。問診・視診・聴診・触診を駆使し、自分の「診察力」を磨くことに一生懸命でした。25年前くらいに突如、精神科のお薬(シンメトレル)を飲むとFluが治る?という報告がなされ、インフルエンザ治療薬というものが突如でてきました。その医学的証明がされて今のノイラミニダーゼ阻害剤というFlu治療薬ができました。治療薬が出てくるまでは、「緑茶うがい」、「鼻うがい」、漢方薬「麻黄湯」、去痰剤「カルボシステイン」が効くなどと、Fluには怪しい治療がなされており、僕らも「インフルエンザだから5-7日は必ず熱が出る」とバンバン解熱剤を処方していました。そして「ボルタレンを使用すると、インフルエンザ脳症が増加する」というデータが公表され、その後は小児の解熱・鎮痛剤は「アセトアミノフェン」しか使用できなくなった歴史があります。諸外国では高価なのでほぼ使用されないといわれるFlu治療薬ですが、国民皆保険の日本では治療薬の恩恵にあずかれるわけです。治療薬が劇的に効くのを僕も実感しますし、治療してあげたい一心で、検査もしています。

話を戻すと、キットも薬もなかった時代を経験している医者は「診察力でカバーする」という姑息なテクニックも一応できます。簡単な例だと、「アデノはぐったりしない発熱。インフルエンザはぐったりする発熱」です。いくらワクチンを打ったとしても、やはりインフルエンザ発症初期はめちゃくちゃダルいです。だから問診がとても重要です。溶連菌はぐったり高熱(たまに嘔吐)だが、次の日に熱が下がっていることが多いのも特徴です。ノドが痛いと訴えてくれたらなおわかりやすいです。 とはいえ、いくら診察力を磨いたとしても、僕らが診ている(ノドの違い)や(もしもしの違い)は非常に微差です。何よりも病院へ来る前までの状況情報がとても重要です。これを上手く利用して「受診力」をご家族が磨くことも、より良い医療に繋がると思っています。もちろん受診するタイミング(早すぎると全くわからない)も大切ですからねー。検査も大事ですが、ものがない診療のなかでもより良いベターな結果がでるようがんばりますので、よろしくお願いいたします。そろそろFluの流行は終息し、胃腸炎の季節がやってくると思います。

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