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鼻吸引にまつわるあれこれ

[2019.03.22]

鼻水は吸った方がよいのでしょうか?と質問されることがあります。これについての僕の答えは「基本的にはイエス」です。

いわゆる上気道炎(=かぜ)をひいたときには、鼻粘膜・咽頭粘膜の炎症が起こりますのでタラタラと透明な鼻水が出てきます。大人は鼻がかめますが、子供は鼻がかめません。

さらに引き始めから少し時間が経ってくると、黄緑色の鼻汁になることも多く、これが鼻水のタンクである副鼻腔に詰まることで、寝起き時に痰の絡んだ咳がする副鼻腔炎のもとになります。

懸命に鼻がかめる場合は自力でも治せます。かめなくても自然によくなることも多いです。でも、詰まるとなかなか治りにくいので、治療するにも日数がかかります。

ならば、つまらないようにするにはお家でも鼻吸引ができると、かなり改善が見込めます。しかし、市販されている鼻吸引器はイマイチ吸引力が弱いのも事実です。

では飲み薬で何とかならないのか?。現在0-2歳児ぐらいには「ザイザルシロップ」が鼻水を止める薬としてよく処方されています。

昔は、鼻水のお薬と言えば「抗ヒスタミン剤」で、鼻水も止めるけれど眠気も来るというものが主流でした。大人も然り。でも特に花粉症治療などではこの「眠気」というのが問題になるので、最近は「抗アレルギー剤」と呼ばれる、抗ヒスタミン作用が弱いお薬がどんどん開発されています。運転中眠気がきては困るような職業(航空会社、自衛隊など)では、この眠気がほぼないお薬しか飲んではダメという話まであります。で、大人には選択肢がたくさんあるのですが、こども、特に2歳未満の乳児には全く選択肢がないので「ザイザル一択」となっているわけです。「抗ヒスタミン剤」は、発熱時に「熱性けいれん」の自然頓挫を遷延化(熱性けいれんを長引かせる)という弊害が喚起された2015年ごろより、特に発熱時には処方には注意が必要になりました。

でもこのザイザル、やはり抗ヒスタミン作用は弱いのでピタっと鼻水は止まりません。なので、僕はいまだに鼻水がひどそうなお子さんには抗ヒスタミン剤を処方することが多いです。

ところで、鼻吸引といえば耳鼻科で、小児科では鼻を吸ってくれないというイメージが強い。

おそらく一つの要因は、小児科独特の診療報酬請求(包括医療)が関係していると推測されます。

「鼻吸引しても、処置料を請求できない」という我々小児科医の悩み。やるだけ損する面がある。一方耳鼻科は(出来高制)なので、処置をすると請求額が増すという、生々しい現実が存在します。

これは、ピンクの用紙を使用されている患者さん側には全く見えない部分です。もちろん鼻の専門医、設備的にも小児科より優れた機械があります。

お薬飲むのと、鼻吸引とどちらがいいのか?というと、鼻吸引の方が安全だという小児科の先生もおられます。

僕は、診察上自分が必要だと思う患者さんについては鼻吸引しますし、自宅での吸引もお勧めしますし、お薬も病状に見合ったものを出すように心がけております。

ここに正解はないのですが、ご家族のみなさんも上手な受診の使い分けをされたらよいと思いますし、もっと質の良い吸引器が安価に手に入る時代になることを願います。

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