「必要」と「とりすぎ」
我々人間は根本的には管腔動物であり、光合成などでエネルギーを自家発電できない以上、生命維持のためには外界から必要なものを取り込み(in)不必要なものを出す(out)ことが必須です。
口から呼吸ができるのは、空気にちょうど適度な酸素が含まれているからで、酸素はエネルギーとして利用し、不必要な二酸化炭素を吐き出す。
口から消化管へ各種の栄養素を摂取し、不必要なものはうんちとして排出します。こういう一連の生命維持作業を我々は無意識のうちに日々行っています。
ですから、何をいかに口にする(inする)のかを考えて生活しなければなりません。
inするという作業には、「足りないものを補う」というマイナスをゼロにする側面と、「足りているがもっと増やす」というゼロからプラスにする側面があると思います。
言い換えると、適度であると「栄養」になりますが、とりすぎると「体に悪い=毒」になるという考えです。どんないい物でも、とりすぎは良くない。
当然食べ物は、バランスよく食べないと「肥満」の原因になります。必要以上にはとりすぎないこと、これが健康にはとっても重要なキーワードです。
我々が処方する「薬」も、やはり同じことが言えます。健康維持をサポートするために必要なものです。そして薬には「足りないものを抑える」部分と、「過度な反応を抑える」という二つの側面があります。
やはり飲みすぎるとよくないわけで、だいたいこれぐらいの日数を飲むとちょうどよいという判断から処方量を決めています。
どうしても症状が緩和されない場合は、長期にわたって投薬することがありますが、これは「とりすぎ」ではなく「必要」だと理解していただきたいのです。
抗生剤の長期投与は、どうしても治療という側面より、耐性菌が、というような一部の悪い側面をとらえて嫌悪感が出てしまうこともありますが、やはり治療の主たる目標を忘れてはいけません。
さらに、喘息のお薬などの場合には、過度な反応を起こさせないよう「予防する」効果を期待しており、ずーっと続けていただきたいものもあります。こういうお薬も「とりすぎ」にはならないのです。
もちろん、お薬には副反応があるのも踏まえて、必要で適度な投薬というものを心がけております。
屁理屈に近い話ですが、普段からこんなことを踏まえて、必要に応じてお薬を処方しています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。