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「咳込んで吐きます」は良くないことなのか?

[2020.12.17]

雪も降りましたが、一気に気温が下がり、子供たちの風邪症状が治りにくくなってきました。小児の命題として「咳込み嘔吐」があります。単純な咳とは違い、吐くほどひどい咳は親御さんとしてはとても心配になる症状です。

咳はなぜ出るのか?は、大きく分けると、①気道への直接刺激 と ②気道にたまった分泌物の排出の二つの要素があると考えます。①はみなさんも経験ある、突然エホエホとなる刺激で、風邪のウイルスによる気道過敏性の亢進(気道がデリケートになる)が理由です。こちらはお薬で止めるのが難しい症状です。②については気道炎症の治癒機転で、処理されたウイルスや白血球の死骸が粘液・痰となって気道にたまるため、不要物を出そうとして二次的に咳がでます。この役目を担うのが、みなさまご存じ「カルボシステイン(去痰剤)」です。これをいかに上手な匙加減で使うかが、こどもの気道症状を制するといっても過言ではありません。

一般的な風邪は、急性期から治癒期になると、湿った痰の絡んだ咳になり、徐々に咳き込む頻度と回数が減ってゆき、約1週間で完治します。なので僕は7日分処方しています。

 大人と違ってなぜ子供たちは咳き込み嘔吐をするのかといいますと、1)こどもはいきむ力が弱く、咳き込んで排出する力が弱いため、咳をする回数が大人より増える 2)咳をすると同時に必ず食道・胃に空気を吸い込むため、徐々にお腹もパンパンになってくる。、お腹が張ると余計に咳がでやすい。といった要素が相まって子供たちは容赦なく咳をします。ですから、食べたあと、飲んだあとなど、お腹が空っぽではない状態の方が咳き込みやすいんです。何しろ子供はとんでもない場所で吐きますので、被害甚大で処理も大変です。ただし、咳き込むことを止めてしまうと、ウイルスや細菌が気道に貯留してしまうため、かえって気管支炎や肺炎など重症化してしまうことが懸念されます。咳き込みつつの嘔吐は、胃内容と同時に気道の不要物も必ず出ます。そうすることで、こじれたり重症化することを生理的に防いでいるのです。ですから僕は、咳き込み嘔吐は「決して悪いことではない」とお伝えしています。交感神経・副交感神経のバランスから、子供の咳は大概夜に悪化します。吐きそうだなあと思ったら、袋をかけたごみ箱を準備して吐かせちゃうといいですよと言ってます。吐いた後はスッキリして、すやすや眠ってくれることが多いです。だからあまり咳き込み嘔吐を悪者扱いしないであげてください。

 少しでも咳き込む強さを和らげてあげたいと僕も考えて処方をしています。飲み薬だったり、咳止めのテープだったり、時には抗生剤が効く場合もあります。それでもなお咳き込みがひどい場合は、解熱剤(座薬でも、頓服でも同じ)を使ってみてください。①気道への直接刺激(気道の過敏性)を誤魔化す効果が実はあります。大人も同じで、ロキソニンを飲むと咳が少し和らぎます。これを常用するのはよくありませんが、やむを得ないときには意外に効果がありますのでお試しください。

 もちろん冬場、室温差(20℃を切らないように暖房)や湿度(50%以上が理想)の管理も重要であることもお忘れなく!!

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