子供の胸痛について
「胸が痛いというのが心配で」と、受診されるお子さんがたまにおられます。
僕は小児循環器が専門なので一番の得意分野、喜んで診察をさせていただきます(笑)。
大事なポイントを挙げると、①どこが痛いのか(左か右か、上か下か、前か後ろか) ②どうしたら痛くなるのか(運動時・安静時) ③痛みの種類(チクチク?ピリピリ?ぎゅー?ドキドキ?)④痛みの持続時間 などです。
教科書的には、子供の胸痛の原因としては胸壁の痛みが50-80%、呼吸器が10-20%、心因性が10%、心臓、ケガ、消化器が5%程度とされております。
要するに、胸骨・肋骨・軟骨・肋間筋・肋間神経や胸膜の痛みがほぼ80%程度を占めます。表面が痛い・肋骨に沿って痛みが走る、息を吸ったり吐いたりするときに痛いという場合はほぼこれに当たります。
肋間神経痛に近く、あまり痛みは運動とは関係せず、安静にしているときにピリッと痛むことが多いです。原因が特定できないので特発性胸痛という診断名になることも。
いずれにせよこの種類の痛みは、放置しておいても運動しても悪化することはなく、自然によくなります。
運動時に胸が痛いと来られた方については、実はよくよく話を聞くと「小児ぜんそく」のコントロールが悪くて、呼吸苦から胸が痛いという訴えになることが多いです。
これは、喘息治療をしっかりしないと良くなりません。治療すると、すごく楽になります。ちゃんと治しましょう!
心因性は、まあ他の症状が多彩なのでご家族も検討つきます。
で、本当に心臓疾患が見つかることは、実際にはほとんどありません。
川崎病冠動脈瘤、先天的な冠動脈異常、心膜欠損などの冠動脈の虚血症状、肥大型心筋症・拘束型心筋症などの心筋虚血症状、肺動脈性肺高血圧症による心不全、などなど非常に珍しい病気も中にはありますが、まーずこういうケースには滅多に出会いません。
本物の心疾患ありきの胸痛に共通する(ダジャレ)のは、「胸痛から嘔吐する」という所見です。並々ならぬ痛みが起こることを意味しています。ですから「嘔吐」は危険なサインです。
大人の狭心症・心筋梗塞も必ずといっていいほど痛みで嘔吐します。
とにかく、子供の胸痛は「大丈夫」であることが多いです。また、レントゲンや心電図・心エコーなど心臓の検査は痛い思いはしません。
大丈夫!って安心するのも、健全に生活するには大切です。気がかりならば一度精査をお勧めします。